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緑のダム

最近、ダムの話題が紙面を賑わしています。

昨年末の事業仕分から、検討を経ての10年度予算執行。

今年は旬な話題であり、またこれからの森林のあり方を考える上でも重要な要素です。

そもそも、なぜダムが必要なのか。

治水・治山と水源確保の観点から考える必要があるでしょう。

私達の生活インフラの根幹を揺るがしかねない問題でありながら、身近に感じずらいのも事実。

特に、山の荒廃は街にいても実感できないものなので、せめて山に行ったとき位は、考えてみたいもの。

そのお手伝いこそが、私達森林インストラクターに求められています。

そして、ニーズがある=必要な知識であるほど出題率も高くなるのかな・・・邪推です(笑)

そんなこんなで、森林の水源涵養の役割について考えてみましょう。

わが国は亜熱帯から亜寒帯に位置し、豊富な降水量に恵まれています。
島国という特性から、国土の大半が急峻な山岳部に覆われ、雨水は瞬く間に海へと流れ出ていきます。
実際には、山には森があり、降り注ぐ雨を一時的に貯水することで河川水量を一定に保ちます。

これを、森林の貯水能=緑のダムと呼んだりします。

では、どのように森は水を蓄えるのでしょうか。

森林には、高木層・亜高木層・低木層・草本類・蘚苔類と層状の植生が発達し、階層構造が形成されています。
降水は、まず高木層を始めとする樹木の樹幹によって受け止められます。
そして、木の葉に当たって梢から枝・樹幹を伝わる樹幹流として地面に達します。

実はこの時に、葉によって受け止められた雨水の一部は、蒸発して大気中へと帰っていきます(降水量の2~3割は蒸発)。
こまかく言えば、土壌中の水分ですら植物の生育の為に必要経費として蒸散する分があり、併せて降水量換算で2~3割のも達します。

以外や、森は水を貯めるわけではないのです。

樹幹によって勢いを弱められた雨水はそのまま落下していきます。
勿論、下層植生が発達していれば、同じように草本がクッションの役割を果たします。
裸地であれば地表の土=表層土が雨滴によって削られ、流されしまいます。

こうして緩やかに地面へ降った雨水は、土壌へと染み込んでいきます。
では、ここで土壌の構造について触れたいと思います。

土壌は、表層から落葉層・腐葉層(A0)、腐食を含む鉱質土層(A1・A2)、腐食の少ない鉱質土層(B1・B2)、母材層、基岩から成ります。

時間を逆から辿れば、岩盤(基岩)が腐食により砕け荒い岩石の層ができ、それが徐々に細かくなって砂礫を形成していきます。やがて、荒地にも植物が入り込み、徐々に背丈を高くしながら腐食を蓄えて森林へと遷移していきます。
その過程で、同時に土壌も豊かになっていきます。

こうして出来上がった土壌には、大小無数の間隙が存在します。
これは、構成粒子の隙間や根の枯れた跡、また、土壌生物(ミミズなどの大型のものから小型の虫や、菌類に至るまで)の活動によってできたものです。
さらに、土壌を構成する粘土粒子は粘着作用によって接着され集合体を作ります(団粒構造といいます)。
地中の水分は、これらの間隙を流れていきます。

この時、大きな空隙はすんなりと下へ流れていきますが、狭いところはどうでしょうか。
当然、毛管力や分子間引力の影響で流速は遅くなります。
この大小の間隙のバランスにより、水はけが良くかつ保水力のある土壌が実現します。

さらに、雨水が流下していく間に土壌のフィルターに濾された結果、水質も浄化されます。

したがって、森林は水を蓄えているわけではなく、緩やかに降水を河川へと流すことで、河川流量を一定に保つ役割を果たしているのです。

水源涵養・水質浄化。

一言で言えばたいした事はありませんが、その実現のためには気の遠くなるような年月が必要です。
充分な面積と深さの土壌が形成されるには、豊かな森林とそれを支える生態系が同時になくてはならないからです。

ではどんな森林で、水源涵養作用は大きくなるのでしょうか。

続きは次回にとりあげたいと思います。

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